覚えていることは、覚えている。
身に付いていないことは、身に付いていない。
改めて。
中心を捉える感覚は、意外にもそれなりに覚えていた。
「抜く」は忘れた。
剣術は、基本のお浚い。加えて、八相からの袈裟切りへの対応。
それまで気持ちよく稽古していたのだが、終了間近になって事故。
事故とは大げさだが、相手の親指を打ってしまった。
幸い大事には至らなかったが、少しずれていたら指の骨を砕いていたかもしれず、それまでの楽しい気分は一瞬にして消える。
気を抜いていた訳でもなく、ムキになって力任せになっていた訳でもない。
それなりに集中して、手打ちを諫めつつ打ち込んでいた。
だが、アッと思った時、剣を止められなかった。
確かに、「この1本」という最高度の集中ではなかったし、勢いで足を運んだ部分もある。
つまり、それなりの集中や注意では足りないということなのだ、と改めて思う。
吾々のレベルに於いてもそうなのだ。