50を過ぎて剣術入門、気がつけば60超え

古武術の稽古日記です。

五輪書を読む 水之巻 9 兵法身なりの事-1 2009.04.01

●原文  一 兵法の身なりの事

身のかかり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をみださず、ひたいにしわをよせず、まゆあいにしわをよせて、目の玉うごかざるやうにして、またたきをせぬやうにおもいて、目をすこしすくめるやうにして、うらやかに見ゆるかを、鼻すじ直にして、少しおとがいを出す心なり。


○私訳  一 姿・形について

兵法に於ける姿勢とはこういうものである。
顔はうつむいたり、あおむいたりせず、また傾けたり、歪ませたりしない。
目はフラフラとさまよわせない。額にシワを寄せるのではなく、眉間にシワを寄せるように力を入れて目玉が動かないようにし、マバタキしないように心掛け、目を少し細めてものを見る。
鼻筋を真っ直ぐに立てて顔をしかめず、少し下アゴを前に出すようにすると、澄んで晴朗な顔付となる。


☆通常「身なり」とは服装のことだが、ここでは姿勢について述べているようだ。
脚注によると、「身のかかり」とは姿勢のことで、どうも風格ある姿勢というニュアンスがあるらしい。
我田引水かもしれないが、ここで述べる「身なり」とは、理に適った身体の形というだけでなく、傍目に映る姿・形といった意味合いを含んでいるように思える。何故そういう要素が必要なのかは、読み進めばわかるかもしれない。

句点(、)で文が続き、句の係り具合が曖昧だが、どうも3つの文に分けられるように思える。
1 顔の姿勢
2 目を乱さない事、そのためにはどうすれば良いか
3 顔付の事、うらやかに見える顔を得るにはどうすれば良いか


「すくめる」は身を竦めるのすくめるで、ここではすぼめるという程の意で、目を細めて物を見るという事だと思う。尚、似た言葉に眇める(すがめる)というのがあるが、これは片目を細めて見る事まので、該当しない。

「うらやかに見ゆるかを」は「うらやかに見える顔」
されど「うらやか」は辞書にも載っていなかった。意味不明。
音の感じから、勝手に「うららかに」と読み替えて訳した。穏やかで明るい日差しという語感だが、気持ちを表す場合、隠し事なくはっきりとした様と辞書にあったので、そのように。

「鼻すじを直に」とは、鼻梁にシワを寄せない、顔をしかめないという事。
「おとがい」とは下アゴの事。