50を過ぎて剣術入門、気がつけば60超え

古武術の稽古日記です。

五輪書を読む 水之巻 14 足づかひの事

一 足づかひの事

●原文 足のはこびやうの事、つまさきを少しうけて、きびすをつよく踏むべし。足づかひは、ことによりて大小遅速はありとも、常にあゆむがごとし。足に飛足、浮足、ふむすゆる足とて、是三つ、きらふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足とは、片足ばかりうごかさぬもの也。きる時、引く時、うくる時迄も、陰陽とて、右ひだり右ひだりと踏む足なり。返返(かえすがえす)、片足ふむ事有るべからず。能々吟味すべきもの也。

○私訳 足を運ぶ際は、爪先を少し浮かし気味にして、踵を強く踏む。
また状況により踏み幅の大小、速度の遅速はあるとしても、常に歩むように足を使う。
飛足、浮足、踏み据ゆる足の三つは、特に避けるべき足使いである。飛足とは跳び撥ねる足使い、浮足とはしっかりと踏まない足使い、踏み据ゆる足とは踏み締めたまま居付いて動けぬ状態の足である。
兵法には陰陽の足という言葉があるが、これが肝心である。陰陽の足とは、片足だけを動かすのではなく、右左右左と交互に踏む足使いを言う。切る時、引く時、受ける時、夫々左右の足で交互に踏む。くれぐれも片足だけで事を為してはならない。
以上のこと、よくよく研究すること。

☆「兵法三十五箇条」では、この三つに加えて、「抜く足、(身体の移動に)遅れ先立つ足」を追加して、嫌う足としている。いずれもしっかり踏むことが要諦であり、「足場いか成る難所なりとも、構ひなき様慥(たしか)にふむべし」とある。

ここで述べる足使いは、現代の剣道とは真逆。それにしても、踵で強く踏むというのは面白い。そうしないと、太刀を振る軸が安定しないということか。別の箇条に、「重き太刀の様に、太刀を静にして、敵に能くあたる様に、鍛錬有るべし」とある。