50を過ぎて剣術入門、気がつけば60超え

古武術の稽古日記です。

体の落下

「日本古来の武道の動きを 柔 (やわら) と呼ぶならば、柔 とは体 (たい) の落下のエネルギーを使う動きであり、下半身の役割は落下する体を支えることにある」
 
先生の言である。解説はできない。師の言や、墨守すべきということもあるが、それ以前に、解説できるほど理解できていない。況や修得をや。
 
楼門の扁額ほどの意味で、掲げた。
こういうことを目指すのだと思う。
 
☆ ☆ ☆
 
体を落下させる感覚は、次の動作で (うまくいけば) 体験できる。
まっすぐに立ち、身体を沈め、そのまま蹲踞 (そんきょ) の姿勢になる。
 
●まっすぐに立つとは、自然体で立つということ。
足を肩幅に開いて、身体の力を抜き、特に上体や頭をまっすぐに=前屈みにならずに立つ。細かいことを言えばきりがないが。
 
●身体を沈めというのが、体を落下させるに該当する。
大事なのは、しゃがむ動作ではないということ。スクワットではない。脚の筋肉を使って、上体を引き下ろしてはいけない。
膝や腰を緩めて、自重で沈む=落下するに任せる。言葉で言うと簡単だが、これがなかなかできない。人によっては、膝を抜くなんて言い方をするかもしれない。
この時、上体や頭がぶれないで鉛直線上を落下するように心掛ける。武術としてはこれが大事。ここでぶれたり、前屈みになったりすると、折角のエネルギーが拡散してしまう。当派では「軸を立てる」と言って、鉛直線的な落下を特に重視している。
 
●蹲踞 (そんきょ) とは、爪先立ちでしゃがんだ姿勢。
相撲の立合いの際、互いに見合ってる時のあの姿勢。剣道でもやる。
爪先立ちになり、膝や踵は浮かせる。浮かした踵に尻を乗せ、上体を立てる。
 
自然体から蹲踞までを、一動作でやる。
この一動作というのも大事。理由を述べると長くなる。それだけで1テーマ。
 
尚、実際に試してみられることは勧めるが、無理は良くない。腰や膝を痛める。
私自身で言えば、未だに蹲踞がうまくできない。膝が充分に曲がらないのだ。尻が踵から少し浮いている。で、様子を見ながら行っている。
 
慣れたら、逆に、蹲踞から一動作で立つ。
これも反動をつけて立ってはいけない。繰り返すがスクワットではない。「煙の立ち昇るように立つ」と記した本もあった(武術の本ではないが)。
一見逆方向のようだが、この立つ動作も体の落下を利用していると思う。
 
だから、奥が深い。