50を過ぎて剣術入門、気がつけば60超え

古武術の稽古日記です。

茨城の日帰り温泉で

そう言えばと、以前に体験したことを思い出しました。
いや、順番で言えば、そんな体験があったからこそ、「盆踊り」の描写に惹かれたのかもしれません。
下記はその体験をまとめたもので、このブログにかつて載せたものですが(現在は非公開)、適宜加筆修正の上で再録します。
 
 ◆
 
茨城の日帰り温泉に行った時のことである。
私は、板張りの廊下に置かれた縁台に座って、涼んでいた。
三々五々、私の前を入湯客が歩いて通り過ぎる。

ふと気づいたのだが、誰も皆、一様に足音が高いのだ。
おっさんやお兄ちゃんだけでなく、おばさんも小柄な女性も、老若男女に関わりなく、板張りの床を踏み鳴らして通り過ぎるのである。
中には、信念に基づいてわざとしているのかと疑う程に、殊更に音高くドシンドシンと踏み鳴らして行く者もある。
他人事ながら、いずれ膝や足首を痛めるぞと心配してしまう。

何と言うか、静かに歩くとか、足音に意を払うとかについてまるで関心がないらしい。
それは全くの埒外にあるようだ。
だけでなく、より正確には、靴やブーツで野道を歩く歩き方そのままに、ただ靴やブーツをたまたま履かずに、野道ではなくたまたま板張りの廊下を歩いているという風に見える。
 
何となく野卑に感じる。
裸足で廊下を歩くなら、それなりの歩き方があるだろうと思うのだ。
 
その内、あれと思ったのだが、足音を立てない一団があるのである。
中の一人二人ではなく、その小グループは皆足音を立てずに歩くのである。
 
スゥーと通り過ぎて行く。

地元のオバサン、オバアサンのグループである。

年齢は60代より上か、ごく普通の、控えめに言って地味な、率直に言って野暮ったい、田舎のオバサン達である。
彼女たちは、ほぼ例外なく、ドシンドシンとは歩かなかった。
繰り返しになるが、足音を立てずに、スゥーと通り過ぎて行くのである。

そのように歩くことが日本の伝統的な屋内の歩き方なのだと思う。
そして、彼女たちがお茶や日本舞踊を習っているとは思えないから、それは日常生活の中で受け継ぎ、会得したものだと思う。
 
では何故、彼女たちだけがそう歩くのか、何故特異的に彼女たちなのかは分からない。敢えて述べてもベタな素人評論にしかならない。
 
ただ、、やはり女性は家に縛り付けられていたのかなと思った。