50を過ぎて剣術入門、気がつけば60超え

古武術の稽古日記です。

五輪書を読む 水之巻 16 太刀の道

一 太刀の道といふ事

●原文 太刀の道を知るといふは、常に我さす刀をゆび二つにてふる時も、道すじ能くしりては自由にふるもの也。太刀をはやく振らんとするによって、太刀の道さかいてふりがたし。太刀はふりよき程に静かにふる心也。或は扇、或は小刀などつかふやうに、はやくふらんとおもふによって、太刀の道ちかいてふりがたし。それは小刀きざみといひて、太刀にては人のきれざるもの也。太刀をうちさげては、あげよき道へあげ、横にふりては、よこにもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、つよくふる事、是太刀の道也。我兵法の五つのおもてをつかひ覚ゆれば、太刀の道定まりて、ふりよき所也。能々鍛錬すべし。


○私訳 太刀の道というものがある。太刀の道とは、太刀の通る道すじであり、また太刀の振り方でもある。
太刀とは、この太刀の道を良く理解した上で、指2本で意のままに振るよう心掛けるべきものである。
太刀を速く振ろうとすると、太刀の道に逆らうことになるので、うまく振ることができない。
太刀は、振り易いように静かにふることが肝心である。
例えば扇や小刀を使うように速く振ろうする考えは、太刀の道から外れたものである。
それは「小刀刻み」といって、実戦で人を切ることのできぬ、役立たずの振り方である。
太刀を振り下ろしては、上げ易い道筋を辿って元に上げ、横に振ったなら、また戻し易い道筋を辿って元に戻し、大きく肘を伸ばして、強く振ること、これが太刀の道である。
我が兵法の五つの表(基本型)を覚えれば、太刀の道も自ずと定まり、振り易くなるから、良く鍛錬すること。


☆速く振る必要はないと言っているのではない。速く振るなと言っているのである。
(穏やかに言い直しても)速く振ろうとするなと言っている。

あっさり読み流してしまいがちだが、静かに振れと言っている。
静かに振るとは、文脈から柔らかく振るという程の意味だろうが、文字通り、音を立てずに振るともとれる。

蛇足だが、当流(二天一流ではない)では風切り音がする振り方は不可である。
腕力で力任せに振ると、風切り音がする。
静かに振るにはそれなりの工夫と振り方がある。

太刀の道、即ち太刀の正しい振り方とは、振り易いように、静かに、大きく肘を伸ばして強く振れ、であるらしい。
振り易くとは、太刀に逆らわずということだろうか。